⑦ 条件付き復職はどこまで認めるべきか

復職の相談を受けていると、
「条件付き復職は、どこまで認めればよいのでしょうか」
という質問をよく受けます。

短時間勤務、残業免除、業務軽減、在宅勤務など、条件を付ければ復職はしやすくなります。一方で、「それは甘やかしではないのか」「他の従業員との公平性はどう考えればいいのか」と悩む人事労務担当者も少なくありません。

条件付き復職を考えるうえで大切なのは、
どこまで配慮するかではなく、何のためにその条件を付けるのか
をはっきりさせることだと私は考えています。

条件付き復職は「一時的な段階」である

条件付き復職は、休職から元の働き方に戻るまでの一時的な段階です。
復職した瞬間から、休職前と同じ働き方ができる人はほとんどいません。

だからこそ、

  • 短時間勤務
  • 残業免除
  • 業務量の調整

といった条件を付けながら、少しずつ仕事に慣らしていくことには意味があります。

ただし、条件付き復職は「この働き方を続ける」ことが目的ではありません。
一定期間のうちに、会社が期待する水準に近づいていくことが前提になります。

判断の軸は「労働として成り立つか」

条件付き復職をどこまで認めるかを考える際に重要なのは、
最終的に仕事として成り立つ形で労務提供ができるか
という点です。

短時間だけなら働ける、簡単な作業だけならできる、という状態は、
復職の途中段階としてはあり得ますが、
それだけで復職が成立するわけではありません。

条件は、
「この条件があれば、最終的に元の就労条件に戻れそうか」
という視点で設計する必要があります。

比較的取り入れやすい条件、注意が必要な条件

実務上、比較的取り入れやすい条件には次のようなものがあります。

  • 短時間勤務からの段階的な時間延長
  • 残業の一時的な免除
  • 業務量の調整
  • 定期的な面談の実施
  • 指示系統を一本化すること(誰に聞けばいいかを明確にする)

一方で、慎重な検討が必要なのは、

  • 「簡単な仕事だけ」「責任のない仕事だけ」といった曖昧な条件
  • 在宅勤務を固定すること
  • 配置転換を前提とした復職
  • 特定の人物との接触回避

などです。

これらは職務内容そのものを大きく変えてしまうことがあり、
条件のつもりが、実質的な配置変更になってしまうケースもあります。
また、他の従業員に、
「休職を挟めば在宅勤務にしてもらえる、配置転換してもらえる」
などの疾病利得(病気であることで得られる利益)を感じさせてしまう可能性があります。

条件を決めるときに考えておきたいこと

条件付き復職を設計する際には、次の点を整理しておくと判断がぶれにくくなります。

  • その条件は、どんな再休職リスクを下げるためのものか
  • その条件は、いつまで続けるのか
  • 何ができるようになれば条件を外すのか

「とりあえず付けておく条件」は、後から問題になりやすいです。
期限や目安を決めておくことで、本人・上司・人事の認識をそろえやすくなります。

原因への対策とセットで考える

条件付き復職がうまくいかないケースでは、
休職に至った原因への対策が不十分なことが少なくありません。

長時間労働、業務の偏り、ハラスメント、対人関係の問題、本人の特性など、
原因を整理しないまま同じ働き方に戻せば、再休職のリスクは高くなります。

条件は、今の体力や集中力を補うためのものです。
原因そのものを放置したままでは、条件を増やしてもうまくいきません。

条件付き復職は「優しさ」ではなく「設計」

条件付き復職は、従業員を甘やかすためのものではありません。
また、会社が一方的に我慢するものでもありません。

安定して働き続けるための設計として、
目的・期間・出口を意識して条件を決めることが重要です。

産業医は、条件を決める立場ではありませんが、
条件が適切か、現実的か、再休職のリスクを下げられるか、
その判断を支えるための医学的な助言を行う存在だと考えています。

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