精神科や心療内科の診察について、「診察時間が短い」「5分で終わってしまう」と感じたことがある方は少なくないと思います。本来、精神科医は患者さんの症状だけでなく、生活状況や就労状況も含めた環境全体を把握し、治療と環境調整を行う役割を担っています。
たとえば、患者さんがどのような会社で、どのような業務をしているのか、会社の中でどのような立場にいるのか、正社員なのかパートタイマーなのか、休職制度はどの程度整っているのか。こうした情報を把握したうえで、診断書などを通じて会社とやり取りし、最適な環境調整を行うことが理想とされています。
しかし、これはあくまで理想論であり、現実の医療現場では簡単なことではありません。
診療報酬制度と時間的制約
現実には、主治医の診察時間は非常に限られています。多くの精神科医は、患者さんに対して医学的に必要な診断・治療を行うだけで精いっぱいという状況にあります。丁寧に就労状況まで聞き取り、職場との調整を考える余裕は、ほとんどないというのが実情です。
さらに、精神科や心療内科に限定して言えば、5分診察を行った場合と、20分以上かけて診察した場合とで、診療報酬は基本的に同じです。病院経営の観点から見ると、1人の患者さんに長い時間をかけるよりも、短時間で多くの患者さんを診察した方が収益性は高くなります。その結果、精神科では「5分診察」にならざるを得ない医療機関が多くなっています。
これは医療機関や医師の姿勢の問題というよりも、国が定めている診療報酬体系の構造的な問題と言えます。実際、1人の患者さんに20分以上かけて丁寧に診察を行えば、医療機関としては赤字になってしまうことも珍しくありません。このため、理想と現実の間で葛藤しながら診療を行っている精神科医は少なくありません。
精神科医不足という現実
さらに、精神科医の絶対数が不足していることも、診察時間が短くなりやすい大きな要因です。東京などの一部の都市部を除けば、精神科医は全国的に不足しています。
茨城県であれば、つくば市や水戸市のような比較的人口の多い地域であっても、精神科の初診までに1〜2か月待つことは珍しくありません。このような状況では、主治医が一人ひとりの患者さんに十分な時間を割くこと自体が構造的に困難になっています。
このように、精神科の診察が短時間になりやすい背景には、診療報酬制度や医師不足といった構造的な問題があります。「5分診察」は決して手抜きではなく、制度上そうならざるを得ない現実があることは、理解されるべき点だと思います。
一方で、診察時間が限られている以上、主治医が患者さんの就労状況や職場環境まで踏み込んで調整することには限界があるのも事実です。この点が、次に述べる「主治医の診断書だけでは足りない理由」につながっていきます。
