① 産業医は会社と従業員どちらの味方なのか|「中立」と言い切れない理由

「産業医は会社と従業員のどちらの味方なのですか?」
この質問は、人事・総務の方からよく受けます。
一般的には「産業医は中立の立場です」と説明されることが多いですが、私自身はその答えに少し違和感を感じています。

「中立」というと、スイスが永世中立国であり、戦争をしているどちらの国にも味方も敵対もしないように、我関せずの立場を貫き通すという印象があります。裁判官が「中立」であるということもよく言われることですが、原告側と被告側が争っている前提なので、「中立」という言葉は矛盾していないように感じます。

産業医は「どちらかの味方」ではなく、両方がうまくいく形を探す

しかし、会社と従業員はどうでしょうか。本来、会社と従業員は同じ目的に向かうための協力者であるはずです。
そうであるならば、産業医は会社の味方でもあり、従業員の味方でもあるべき存在ということになります。
たとえば産業医が、従業員の健康診断の結果を評価して保健指導をしたり、安全衛生委員会で衛生講和を行ったりすることは、従業員の健康を守る行為であると同時に、会社にとっても安定した就業やリスク低減につながります。どちらに対してもメリットをもたらしているということです。

対立に見える場面こそ、長期目線で判断する

一見すると対立構造に見える場面もあります。
たとえば、従業員の安全対策のためにコストのかかる設備投資が必要な場合、短期的には「会社に不利で、従業員に有利」と見えることがあります。しかし、設備投資をし過ぎれば、安全は確保されたとしても、会社の資金繰りが危うくなり、長期的には従業員に給与を払い続けるのが難しくなるかもしれません、逆に安全対策を怠りすぎれば、従業員が労働災害に遭い、従業員から会社に対する信頼は失われ、退職者が続出するかもしれません。
このような場面でも、産業医はどちらかの味方をするのではなく、長期的に会社と従業員双方にとってメリットのある方法を探っていく存在であると、私は考えています。
その視点を大切にしながら、日々の産業医活動に取り組んでいます。

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