会社には、従業員の健康と安全を守る責任があります。
そのため従業員が50人以上の事業所では、産業医を選任することが義務づけられています。
一方で現実には、
産業医の選任や届出は行っているものの、実際にはほとんど会社に関わっていない、
いわゆる「名義貸し状態」の産業医契約が見られることがあります。
具体的には、
職場巡視や安全衛生委員会への出席、健康相談などがほとんど行われず、
必要なときだけ名前が出てくる、という状態です。
このような契約形態が、なぜ問題とされるのでしょうか。
従業員に対して不誠実な対応になり得る
産業医は、従業員の健康や安全を守るために設けられている制度です。
それにもかかわらず、実際にはほとんど関与していない産業医を置いている場合、
「会社は、自分たちの健康や安全を本気で考えていないのではないか」
と従業員が感じても、不思議ではありません。
その結果、
会社に対する信頼が少しずつ失われていくことがあります。
会社自体は、名義貸し状態でも回っていくかもしれません。
しかしそれは、安全や健康への配慮が薄い状態で回っているということでもあります。
「問題が起きたとき」に一気に表面化する
名義貸し状態の産業医契約は、
すぐに問題になるとは限りません。
ただし、
- メンタル不調者が出た
- 労働基準監督署の調査が入った
- 労災やトラブルが発生した
といった場面では、
「産業医は、普段どのように会社に関わっていたのか」
が問われます。
このとき、
普段ほとんど関わっていない産業医に相談しても、
- 会社の実情がわからない
- 現場や人のイメージが持てない
- 結果として、親身な対応や的確な助言が難しい
ということが起こりがちです。
定期的に関わるからこそ、産業医は機能する
毎月の職場巡視や安全衛生委員会への出席は、
一見すると「意味のない形式的なこと」に見えるかもしれません。
しかし、こうした積み重ねによって、
- 会社や職場への理解が深まる
- 顔の見える関係ができ、信頼関係が育つ
- 問題が起きたときに、状況を具体的に思い浮かべて助言できる
ようになります。
また、産業医が定期的に関わることで、
会社側・従業員側の双方に
「見られている」「気にかけられている」という適度な緊張感が生まれ、
安全や健康への意識が保たれやすくなるという効果もあります。
産業医は「コスト」ではなく「将来への投資」
産業医がきちんと関わる体制を整えることは、
単なるコスト増ではありません。
- 従業員の信頼を守る
- トラブルを未然に防ぐ
- いざというときに、頼れる存在がいる
こうした点を考えると、
将来への投資と捉えることができるのではないでしょうか。
