⑩ 復職判断に「正解」はあるのか ― 産業医として考えていること ―

普段から復職判断の助言をしていると、
「あの復職は正解だったのか」
「どう判断すればよかったのだろう」
と考えることがあります。

この問いに対する、私なりの答えは、
復職判断に絶対的な正解はない、というものです。

復職判断は、後になっても正解かどうか分からない

慎重な復職支援を行うことで、再休職に至る確率を減らすことは可能ですが、
それでもゼロにすることはできません。
実際の現場では、
あまり慎重な検討をせず、思い切って復職を許可したケースが、意外とうまくいくこともある一方で、
体力や集中力を丁寧に確認し、条件付き復職を設定し、慎重に進めたにもかかわらず、再休職に至ってしまうケースもあります。

つまり、復職判断は、
「慎重にやれば必ず成功する」
「慎重でなかったから失敗する」
と単純に整理できるものではありません。

例えば、復職支援がうまく行ったという結果だけを見ても、
たまたまうまく行っただけなのか、慎重な復職判断が功を奏したのかは、
後になっても分からないことが多いのが現実です。

それでも「考え抜く判断」には意味がある

それでも、復職判断を一つ一つ考え抜くことには、はっきりとした意味があります。

仮に、
「大丈夫そうだから思い切って復職させてみる」
という、いわばギャンブルのような判断でうまくいったとしても、
その場合、会社としては何も経験が残りません。
なぜうまくいったのか、どこがポイントだったのかが整理されないからです。

一方で、
体力や集中力、生活リズム、職場環境、休職に至った原因などを一つずつ確認し、
考え抜いたうえで復職判断を行っていれば、
たとえ結果的に再休職に至ったとしても、
「どこが足りなかったのか」「次は何を見直すべきか」が見えてきます。

正解を当てることより、責任を果たすこと

復職判断は、正解を当てにいく作業ではありません。
会社が従業員に対して、できる限りの配慮を尽くしたかどうか、
その姿勢が問われる判断だと考えています。

一つ一つの復職判断について考え抜くことは、
結果を保証するものではありません。
しかし、その積み重ねが、
会社としての経験となり、
復職支援の質を少しずつ高めていきます。

正解だったかどうかは分からなくても、
考え抜いた判断であれば、次につながる反省と学びが残ります。
それこそが、復職判断に関わる会社や産業医の役割なのだと思います。

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